生え際のトラブル

かつらの生え際が不自然に見える原因と、その構造を知る

生え際が浮く、黒い点が見える、テカる、変色する。これらは気のせいでも、使い方が悪いわけでもありません。多くは土台の素材と毛の付け方に、構造上の原因があります。専業37年、製作修理6,800件超の現場から、症状ごとに整理しました。

かつらの生え際が浮いて見える原因

額から縁が浮いて見える。指で押さえないと落ち着かない。テープを強いものに替えても、しばらくすると同じ場所が浮く。この状態は、土台そのものが変形していることで起きている場合があります。

頭皮のように見える薄いゴム素材を土台に使う人工皮膚、いわゆるスキンベースは、いまも広く使われている方式です。もともと特殊メイク用途から派生した素材で、短時間の使用を前提とした性質を持っています。これを日常生活で毎日使い続けると、熱、汗、皮脂、洗浄剤にさらされ続けることで少しずつ変形が進みます

変形した土台は、頭の形と合わなくなります。合わないものをテープで押さえつけるため、接着面に無理な力がかかり続け、その力が抜けたときに縁が浮き上がります。粘着力を上げても根本は変わりません。土台の形が合わなくなっているためです。

この段階では、テープや接着剤を替えるより先に、土台がどこまで変形しているかを実物で確認する必要があります。

カツラ補修テープに行き着く方へ

自分でカツラ補修しようとして「カツラ補修テープ」が検索上で見つかります。市販の医療用サージカルテープを試された方もいらっしゃるかもしれません。実際、しばらくは持ったという声もあります。ですので、この方法が役に立たないという話ではありません。ただ、もともと何のために作られたテープなのかを、一度確認していただきたいのです。

サージカルテープは、ガーゼやドレッシング材を皮膚に固定するための医療用テープです。用途として想定されているのは短期間の固定と応急処置で、あとではがすことを前提に設計されています。皮膚を傷めずにきれいにはがせることが、この製品の大事な性能です。

本来の用途については、製造元が公開している製品説明をご覧いただくのが確実です。サージカルテープの製品説明(メーカー公式サイト・別タブで開きます)

はがす前提の粘着剤を、はがさない前提で貼り続けることになります。しかも貼る相手は、すでに変形や劣化が進んだ土台です。テープの粘着剤が土台の面に移りやすくなり、内側は通気が遮られて劣化が進みやすくなり、いざはがすときには粘着剤と土台側の劣化物が混ざります。「テープを貼ったら、はがしたあとのほうがべたつくようになった」という状態は、こうして起きます。扱いが悪かったからではなく、用途の違うものを使ったことによる結果です。

生え際に黒い点が見えるのはなぜか

近くで見られたときに気づかれる。写真に写ると不自然に見える。生え際に細かい黒い点が並んで見える場合、それは毛を土台に結びつけた結び目です。

毛は土台に結びつけて固定します。このとき結び目が大きいと、点として視認できるようになります。生え際は肌との境目であり、最初に視線が向かう場所です。ここに規則的な点が並んでいると、地肌から毛が生えている状態とは違う見え方になります。

プロフィットLLCでは、極小の結び目をつくる方法を用いています。あわせて、根元は薄く、毛先に向かって段々と濃い色になるよう色を配置しています。人の髪は根元が透け、毛先ほど濃く見えるためです。この配置により結び目が目立たなくなり、水に濡れて地肌が透けたときにも不自然な光沢が出にくくなります。

結果として、毛量を増やして生え際をごまかす必要がなくなります。気づかれる最も多い原因は毛量の多さですので、この差は見え方の面でも大きく効いてきます。

結び目を極小に仕上げたかつらの生え際
結び目を極小に仕上げた生え際

生え際がテカって見える原因

屋外や照明の下で、生え際のあたりだけが光って見える。原因は二つに分かれます。

ひとつは毛の素材です。人工毛のみで構成されている場合、人の髪にはない光沢が出ます。あわせて、特有の直毛感や、時間の経過による縮れも出やすくなります。プロフィットLLCでは人毛と人工毛を条件に合わせた配合比でブレンドし、人工毛の強度と人毛の質感を両立させています。配合比は一律ではありません。汗をかきやすい方には吸水性の低い毛を多めに配合するなど、その方の条件によって調整します。

もうひとつは土台の表面です。ゴム素材の表面は光を反射します。とくに汗をかいたとき、水に濡れたときに、地肌とは異なる反射のしかたをするため、境目が浮かび上がって見えます。

テカりが気になる場合、毛の側と土台の側のどちらが原因かで対処が変わります。これは実物を見なければ判別できません。

人工毛は、いずれ縮れます

ここで少し立ち止まっていただきたいのが、先ほど触れた「時間の経過による縮れ」です。貼るタイプのかつらに使われる熱に強い加工の人工毛(耐熱人工毛)は、大きく二つの系統に枝分かれします。

系統特徴行き着く先
光沢の強いタイプ黒髪・白髪のどちらも、ツヤが著しくテカります縮れます
艶を抑えたタイプテカりは抑えられていますが、そのぶん縮れやすくなります縮れます

当社でお預かりした範囲では、どちらの系統も早かれ遅かれ縮れが出ています。艶を抑えたタイプは縮れが出るのが遅いだけで、出ないわけではありません。テカるか、縮れが早いか、という違いにすぎず、行き着く先は同じです。

耐熱人工毛が縮れた状態の拡大写真
耐熱人工毛が縮れた状態

縮れが厄介なのは、ご自身では気づきにくいという点です。縮れが最初に出やすいのは頭頂部や後ろ、耳の上といった、鏡では見えにくい場所です。あなたが見ていない角度を、周りの人は毎日見ています。しかも髪が抜けるわけではないため、「まだ使える」と感じてそのまま使い続けてしまう方が少なくありません。縮れて広がった毛は、光の反射も動き方も自毛とは違います。自然さを失った時点で、かつらとしての価値はすでに失われています。

人工皮膚が黄変すると生え際はどう見えるか

黄色く変色した人工皮膚の生え際

人工皮膚が選ばれる理由の多くは、透明感によって地肌が透けて見えることにあります。ところがゴム素材は劣化にともない、比較的早い段階で黄色く変色します

黄変が進むと、透明感という当初の利点が失われます。地肌の色と土台の色が合わなくなり、生え際にうっすらとした色の帯が現れます。ご本人は毎日見ているため気づきにくく、写真や他人の指摘で初めて自覚される症状です。

黄変は洗浄では戻りません。素材そのものが変質しているためです。この段階に来たものは、補修材で延命するか、土台の方式そのものを見直すかの判断になります。

毛が根元から切れる原因

抜けているのではなく、根元から切れて短く残っている。生え際の毛が減ってきたというご相談の中には、この状態が含まれています。

ゴム素材は劣化とともに硬化します。硬化した土台では、毛が根元でちぎれやすくなります。柔軟性を失った土台に固定された毛は、日常の動きや洗浄のたびに根元へ負担を受け続けるためです。

根元で切れた毛は元に戻りません。これが広い範囲で起きているときは、土台が寿命を迎えている合図と考えられます。縮れ毛や切れ毛が出てきた場合も同様です。

では、人工毛をやめて天然人毛にすれば解決するのか

人工毛が縮れるのなら天然人毛にすればよい。そう考える方もいらっしゃいます。ところが、こちらにも別の問題があります。天然人毛は縮れにくい一方で、髪質そのものの強度が問題になり、根元から抜ける、あるいは途中で切れるという症状が出ます。

天然人毛が根元から抜けている・切れている状態の拡大写真
拡大すると、抜けよりも根元で切れている箇所が多く見つかりました
選んだ髪質起きること
耐熱人工毛縮れる
天然人毛抜ける、切れる

素材を選び直しても、どちらかの問題が必ず残ります。使い方が悪いから起きるのではなく、髪質の選択の時点で決まってしまう構造的な問題です。だから、丁寧に扱っている方でも避けられません。

プロフィットLLCが人毛と人工毛を条件に合わせてブレンドしているのは、この二者択一そのものを解く必要があると考えてきたためです。どちらか一方をそのまま使うのではなく、縮れと抜け・切れの両方を抑えることを前提に、髪質そのものを組み立てています。

なお、プロフィットLLCでは新規製作で人工皮膚を採用していませんが、すでにお使いの方のベースのヒビ割れ、毛の補充には対応しています。状態によっては短期間でお返しできる場合もあります。まずは実物を拝見したうえでお答えします。

自然な生え際を作るために必要なこと

ここまで挙げた症状は、別々のものに見えて、原因が重なっています。土台の素材、毛の配合、毛の付け方。この三つが揃って初めて、生え際は自然に見えます。

  • 土台変形しない、黄変しない、硬化しない素材であること。地肌の色に近い見え方ができること。
  • 人毛と人工毛の配合が、その方の汗のかき方や生活に合っていること。
  • 毛の付け方結び目が視認できない大きさであること。根元から毛先への色の変化が再現されていること。
  • 通気蒸れにくく、汗が頭皮にたまりにくい構造であること。

どれかひとつだけを良くしても、他が足を引っ張ります。毛を良いものにしても土台が黄変すれば境目は見えますし、土台を良くしても結び目が大きければ点は並びます。

ゴムを使わない繊維の生え際という選択

プロフィットLLCは、人工皮膚を土台として採用していません。頭皮への影響、耐久性、劣化の速さ、変形、毛の耐久性、そして費用の負担。これらが日常使用に向かないと判断したためです。

3年の実用テストを経て採用したのが、ゴムを使わない繊維の生え際です。蒸れにくく、汗が頭皮にたまりにくいため、頭皮や毛穴への負担が少ない構成になります。素材の分解による劣化が起きないため、黄変や硬化という形での寿命の迎え方をしません。

ネット素材は交換もできます。頭皮の色に合わせて生え際のネットカラーを選べるため、地肌が透けて見える質感を再現できます。

ゴムを使わない繊維素材で作ったかつらの生え際
繊維素材による生え際

通気性があり、地肌の色を再現し、頭皮から立ち上がる毛の質感を再現する。この条件を満たしたものをお使いいただいた方からは、以前の仕様には戻れないという感想をいただくことが多くあります。

ただし、どの仕様が合うかは、その方の頭皮の状態、生活のしかた、汗のかき方によって変わります。一律の正解はありません。実物と状況を拝見したうえで、選択肢をお伝えしています。

いまの生え際が、どの段階にあるか

ここまでの症状のうち、いくつ当てはまるかで対処が変わります。補修で足りるのか、土台の方式から見直したほうがよいのか。電話でお答えできることも多くあります。判断の結果は当社に限定されません。他を選ばれても構いません。

プロフィットLLC
技術責任者 信夫 昇

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会社名合同会社プロフィット(プロフィットLLC)
本社〒362-0035 埼玉県上尾市仲町1-7-25 奥隅ビル3F
TEL:048-772-9065
設立1989年1月から当地で開業。2009年8月に法人設立。
法人代表信夫 昇
事業年度毎年8月1日から翌年7月31日まで
事業内容カツラのオーダーメイド製作、修理
アフターケアおよび付帯業務
理美容師技術講習
自社書籍販売、理容サービスの提供
カツラウィッグ用品、整髪剤販売
毛髪検査、ヘアケアおよび付帯業務
保健所許認可指令鴻保第28-23号
(社)日本毛髪科学協会加盟

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